炬燵の話

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朝夕の冷え込みがきついこの頃、居間の炬燵での読書や書き物が似合う季節になってきた。

 

空調や床暖房が主流となった今でも、炬燵の良さは室に根が生えたように占める固着性だ。

 

床の間が座敷秩序の中心となっているように、炬燵がある所に人が集まることで、その家の居間がもつ独特の意味秩序が自然と組み立てられてゆくという性格をもつ。
食事のテ-ブルとなり、対話の座となり、ゲ-ムや団欒の場を提供し、独り眠気を催せば腰を伸ばして仮眠の場ともなる気安さだ。

 

 

一口にいう炬燵だが、この掘り炬燵には使い勝手により、何種類かの形式とそれぞれの納まりがある。

田舎などでは炬燵と櫓上の甲板の間に炬燵掛けの布団を挟んで垂らした、生活の中の光景を見ることがあるが、粋と簡潔が身上の数奇屋建築の中の炬燵ともなるとだいぶ様子が異なる。

 

・一年を通してつかう住宅の居間などの炬燵の場合。

これには室の冷暖房が前提であるが、炬燵周縁に垂らす布幕を夏なら絽、冬なら羽二重と季節で替えるということをして、生活のちょっとした変化を楽しむことをする。
この方式だと、炬燵の中で暖を取る必要がないため、布幕はあくまで櫓周囲の飾りでしかなく、そのため甲板と櫓のセッティングがしっかりと噛合うので具合よい。

 

・秋口から春先までの限定使用で、畳を上げて炬燵をセットすることも昔は多かった。この場合は、夏季には櫓は畳の下に収納できるよう特別の仕掛けを床下に作っておく。

 

・上記とは別に、料亭などの座敷で特別大人数の客の用意に、床に長大な炬燵をセットすることがあり、このときは隣室境のふすまと敷居を取り外し、室の畳をずらしてセットすることも辞さない大仕掛けを仕込むことまでする例がある。

・また、いつの頃からか炬燵の使用にあたって四隅の小柱が邪魔に感じられるところから、これを省略して甲板中央のスチ-ルで補強された独立柱で受ける方法が料理屋座敷で発達し、いまでは当たり前のようになってきている。さすがに住宅ではそこまでのことをする例は少ない。

 

・炬燵内部の床には電気床暖房を仕込むのが一般的で、その上張り仕上としては現代ならカ-ペットを敷き詰めることが多い。なぜか畳表を敷き込む例を見ないが、上履きなしの素足(足袋・靴下はしているものの)で床を踏むことを考えると、カーペットのように多少沈む着地感のあるほうが温かみを感じるためかもしれない。炬燵のある和室には質感や見た目の清潔感という点で畳表がふさわしいと思うのだがこの例を見たことがないのは、立ち上がるときに足裏がすべるということがあるため避けられるのであろう。

 

住宅や料亭等でもっとも使いやすいとされて踏襲してきた炬燵各部の標準寸法というものがあるが、話が細部に渉り過ぎるので、いつか機会があれば稿を改めて紹介してみたい。

 

 

 

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