大メン柱のこと

2018/01/11 ブログ
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座敷の施工を進める過程で、柱の大メン(ダイメン)を決めるという作業がある。

 

大メンというのは、おもに座敷柱について言われる言葉で、一番目につく場所にある柱(これを大メン柱という)の、座敷に面している柱面のことを意味している。あとあと、座敷の印象がこの目に付き易い柱の表情で左右されることから、どの柱を大メンとして扱うかが、座敷作りでは特に重要視される。

 

工事前の下小屋における諸材料の下拵えの段階で、まず座敷の柱を本数分揃えて、材の色調や木目の感じが不揃いになっていないかをチェックし、さらにそれぞれの柱を部屋の必要とされているどの位置に据えるかを決めて行く作業がある。

この作業でまずやることが大メン柱の決定になる。

 

床の間の床柱(角柱)や脇柱が大メン柱の筆頭にあたるが、この他にも床廻り以外に大メン柱を必要とする場合がある。たとえば、客が入室し順当に着席が決まったときに、主客の正面近い位置に柱が立つことがある。このときなど、主客目線で正面に見えている柱の面をも大面扱いとすることが多い。

 

大メン箇所ではその柱の四面のうち、とくに良い表情をみせている箇所をあてがうのは勿論だが、残りの三面の検討で無駄のない利用法を考えて行くようにする。

一般の柱では、杉、ヒノキや松など、ふつうは柾目の通ったものを上等なものとして喜ぶが、床柱では柾以外にも、あえて柾目を脇へ寄せ大メンには杢目や中杢、中板目といった板目を見せて景色とすることが多い。

また、広間などでは大面として見せたい柱が何本もある場合があり、そのときは選定段階で各柱のもつ大面に等級をつけて、その位置からくる優先順に配置してゆくようにする。

 

今は当たり前になっている四面集成材の柱であったり、ムク材でも追い柾*1 の四方極上柱であれば苦労はないが、芯持ちの柱では将来の割れ止めに必ず背割りという楔形の隙間を入れてあるので、そこは壁付面に回すなど使用法も決まってくる。

実際に建具が入ったり、壁がついたり、押入れのなかに隠れたりする箇所が多いので、予算が充分で事前に必要な本数が確保できる場合は別だが、ふつうの住宅では平面上の検討で用意しておけばだいたいはなんとかしのげるものである。

 

注意すべきは土庇の独立柱で、ここは座敷から庭からというように周囲からの目線が届く場所なので、その柱の背割り(見せたくない!)の向きを考えるに当たっては、室内とは違った注意が必要になってくる。要は客の動きとその視線を予測してなるべく目に触れない向きで決定するというに尽きるが、こればかりは実際にあたって経験してゆくしか伝える方法がない。

 

*1:丸太からの木取りの仕方に付けられた名前で、角柱の断面を見て一方の対角線方向に木目が走る材料の取り方を追い柾といい、4面とも柾目になるので床柱などでは最高の木取り法である反面、芯持材ではないので圧縮荷重に弱い欠点ともなる。

 

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