面取りの話

2018/04/08 ブログ
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・メンのはなし

 

さきに造作材で差し回しを使う例として障子窓の枠を挙げた。

この場合、和建築ではタテヨコの材の前ツラを平らにして廻すことはせず、材の角カドに付けたメンに次の材がかぶらぬよう、メン内になるよう廻してゆくから、一本廻すごとに材は中へ追い込まれてゆくことになり、継ぎ箇所にもうける角柄と共に、ここに生じる陰影が洋室にはない和室らしい表情を作ってゆく。

 

和建築において材角にメンをとる目的は、本来角や材端は物に触れるとへこみ傷がつきやすいので、これを避ける工夫であったろうが、それに加えて直線で構成された意匠にあってぼかし輪郭で縁取られる材の見え方は、材に立体感を生み細く見せるという効果を生む。同じ径なら丸太の方が角柱より細く見えるのと同じ原理で、角柱でありながら大面取りをすることにより丸太のような見え方の効果に置き換えることができるのもこの応用だ。

 

この効果が数寄屋建築にはとても大事で、どの材にどれだけのメンをつけるかが、大変気を遣うポイントになる。ことに柱・框・鴨居・長押、建具の框・桟につけるメンは与える印象が決定的であるだけ、慎重になる箇所だ。

 

昔から大工の家に伝わる雛型と呼ばれる伝書が各種あり、そこでもこの面取りの大きさに言及して材の見付寸法から割り出した決め方が書いてあるが、数寄屋にはこの木割書が問題で、まず参考にはならないことが多い。

というのは、この記録はもともとが社寺建築のなかの玄関や書院を想定しているので、全体の規模も大きく材も太く頑丈な印象を目指した建築が出来上がるような指示になっているからだ。

寛ぎを与えようと材を軽く細くして、陰で強度を作り込む数寄屋建築の行き方とは根本から発想が違うのだ。

 

メン寸法でいえば、書院建築では柱のメンを小さくして材の太さをそのままみせる方向で立派な印象を与えようとするのに対し、数寄屋のメンは材の大きさが野暮な印象を与えぬよう、大きめのメンをとることで材を小さく見せる方向に心を砕く。

 

集成材の面取りは、アンコになる陰の木材と薄く貼る表面材から構成されるが、アンコの材を見せずに45度のメンをとるには、斜めに削るのに必要なだけの表面材の厚みがなければできない。

造作材が貴重で高価になり、対策として貼り材が登場してきた頃の工夫として、面取りの厚み分だけムク材を張り付けてメンを取れるようにしたことがあるが、これでもまだ贅沢な時代であった。

その後、更なる木材の高騰と希少化で和建築に集成材が氾濫したことから、和建築に欠かせないこの面取りという手法が難しくなってきている。ハウスメ-カ-の建築はもちろん、一般の工務店でもムク材を使うことがまれになり、集成材のメンなし枠材が当たり前になってしまった。かろうじてさすがに柱だけはメンをとった形状に仕上げているが、これとても45度に加工したアンコ形状にあわせメンの部分を同じ薄い単板で貼っているだけのしろものだ。

ハウスメ-カ-がピン角カク(メンなしのキッチリ90度)の長押を平気で付けて、素人客に本格的和室だなどとゴリ押ししているのを見聞きするは情けないし、長押が付けられないなら無いような和室のまとめ方がなければおかしい。工夫次第で格調のある和室らしさはいくらでも出せる筈だと思うのだが。

 

だからメンくらい無くても、ではなく、それほど和室の感性にとってメンが大事であることを理解していただきたいのだ。この感性を伝えずしては、住宅にほとんど日本間を揃える意味がないとさえいえるほどだ。 

出雲建雄神社拝殿の柱が柱寸法とメン寸法のみで、見事に数寄屋を表現していたことを以前この項でとりあげたが、さほどにメンの感性に与える浸透力は大きく豊なものがあるのだ。

 

 

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