茶室の思想性ということ
茶室に要求される思想性とは
松籟(ショウライ)
松の幹を吹きすぎるときの風の音鳴りをこう呼ぶが、お茶では釜の煮え湯の立てる音をこれにに見立てて松籟といい、みな無言のうちに、これに聴き入って観賞する。
こうした静寂と向き合えるのも、それを妨げない茶室の簡素なさりげなさが、一同の沈黙を一層この場にふさわしいものに思わせてくれるからだ。
このように茶室には思想性(仏教、主として禅思想の簡潔さ)が付加してくる分だけ見た目の抑えた雰囲気(質素さ)が要求されるので、そこが住宅や店舗などの、他の数奇屋建築と異なるところである。
手間の掛かると思わせる仕事ぶりは避けられ、飾らない簡易な技法で作られたものがふさわしく好もしい。
建具でいうと、住宅なら障子組子の桟にメン(ボウズやクデの)をとることが上等仕事であるが、茶室ではスグミと呼ぶ直角のメンなしの桟が一般的である。
これは、メン取りは手が掛かる分立派には見えるが、質素から外れてくるので相応しくないという判断がはたらくからだ。障子の付け子も同様である。
(茶室内の質素の演出ということでは招かれた客も、服飾から話題まで趣旨に沿うものであることが期待される。時計や指輪など光物は入席前に外しておくのが常識だ。)
しかし、事には例外もあるという話を。
小堀遠州は利休後の武家茶を推進した大名茶人の一人だが、大徳寺の国宝茶室「密庵 ミッタン」では硬い様式である筈の書院風と茶室本来の草庵風が互いに影響しつつ合体した姿を見せている。
狭い茶室に長押を付けたり、障子を赤と黒の漆で塗り分けたり、襖壁である貼付壁と土壁を上下で組み合わせたりと、のびのび自由にデザインしている。
基本を知るとこういう応用も有だ、という見本のような茶室なので、興味をもたれた方は図書館ででも、ぜひご覧を。
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松原設計室
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