有楽の茶室如庵
日本の国宝茶室。戦前の茶室では国宝指定されたものが10棟以上あったのだが戦後そのほとんどが重要文化財に格落ちとなり、わずかに3棟のみが国宝として残された。
それが千利休の待庵、織田有楽斎の如庵、小堀遠州の密庵である。
残った条件は伝来の確実性、材の取替えや度重なる修補がなく創建時の材料がよく残されていること、そしてなにより作成者の人物が歴史上に一定の価値を有していることが大きいであろう。この3人の茶人のうち利休・遠州に比べ、これまで織田有楽斎という人物が注目を受けることが少なかったが、近年井上靖の「本覚坊遺文」や映画「千利休」で桃山の茶人が描かれ出すに従い茶人としての有楽斎が語られ出した。
茶室如庵(ジョアン)は有楽斎晩年の二畳半台目(正確には二畳半台目板入り席というが)茶室で、それまで様々な独特の創意をいくつも試みてきた有楽の茶室の完成形である。
床脇のうろこ板という三角の地板で奥行を錯覚させ、向切炉の前に火灯型に刳り抜いた板を入れたことが結界のように働いて、点前座を客座から心理的に控えさせているという、しかしそれらの工夫が少しづつ視覚に効いてうるさいものにならず、まるで4畳半のようなゆとりを感じさせる点で、工夫に富んだ有楽らしい成功を収めている。
この茶席に心酔していた村野藤吾が各所で様々なバリエ-ションを展開しているが、よほど建築家の空間心象を刺激してやまないと見え、今もこれに挑む設計者が跡を絶たない。
古くはあの尾形光琳が京の仁和寺に遼郭亭という如庵の写しを作っているので、数寄屋に及ぼす桂離宮同様、時代を超えた刺激を茶室建築に与え続けているということだ。
有楽の項つづく。
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松原設計室
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