明治の数寄屋建築と皇室

2017/02/19 ブログ
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明治の日本建築に数奇屋の名作が多数あることをご存知だろうか。どれも大体旧華族や事業成功者が建てたもので、金銀箔の張り壁に絵師が四季花鳥の山水を描き、よく吟味された長大の杉・檜を用いた当時の御殿で、いまでは希少価値を競っている。前田公爵邸、目白椿山荘(山県有朋)、岩崎邸(岩崎弥太郎)、蕉雨園(田中光顕)、白雲洞(原富太郎)、京都の野村別邸、清流亭、対流山荘(伊集院兼常)等々。

 

これに比べると皇室の別荘建築は規模こそ大きいものの内容はまことにさっぱりしたものである。かつて日光御用邸、沼津御用邸とつづけて大改修工事があった折、関係者として設計サイドから近くで立ち会う機会を持たせて頂いたことがあるが、その内容は質素なもので、貼り付け壁だの、2重長押だのと形式こそ上等だがさほどの良い材料を吟味しているでもなく、いわば普通のものである。時代は明治・大正の代であった。

 

皇室と数奇屋は今でこそ外国接待を主として京都迎賓館や皇居内施設に健在だが、かえって明治・大正・戦前昭和には見られないものであった。

この皇室と明治貴顕のありようの差はなにを語るものであろうか。

日本の皇室が質素であったことに、まことにありがたいものを感じる。

 

 

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松原設計室
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